2025.12.02
 
ツルハホールディングス(ツルハHD)とウエルシアホールディングス(ウエルシアHD)は、株式交換方式による経営統合を発表し、売上高2兆円超・店舗数5,600店を超える日本最大のドラッグストアグループが誕生することになりました。統合後は世界的に見てもトップクラスの規模となり、医薬品・調剤・ヘルスケア領域のさらなる成長が期待されています。

本記事では、M&Aの背景・統合の狙い・株式交換比率・今後のスケジュールをビジネスパーソン向けに整理して解説します。

エグゼクティブサマリー
  • ツルハとウエルシアが株式交換により経営統合し、日本最大のドラッグストアM&Aが成立
  • 年間売上約2.3兆円、店舗数5,600超の巨大グループへ
  • 人口減少、薬価改定、人手不足など厳しい環境下での業界再編が加速
  • 物流統合・共同仕入れ・IT基盤統合などにより3年で約500億円規模のシナジーを創出すると見込まれる
  • イオンは議決権比率を50%超に引き上げ、グループ戦略を加速

M&Aの目的(ツルハとウエルシアの背景・狙い)
ツルハHDの発展背景
ツルハHDは北海道を起点に日本全国へ店舗網を拡大。買収と出店を組み合わせ、売上1兆円規模へ成長しました。医薬品・日用品に加え、食料品の品揃えを強化し、地域インフラとしての存在感を高めています。
特徴:
  • 地域密着型の店舗運営
  • 食品・日用品を含む総合型ドラッグストア
  • 買収による規模拡大に強み

ウエルシアHDの発展背景
ウエルシアはイオングループの流通網と資本力を背景に全国展開。調剤薬局併設型店舗が多く、医療・介護・カウンセリングなど専門性の高いサービスが強みです。
特徴:
  • 調剤併設率が高い
  • 24時間営業・介護支援など付加価値サービス
  • イオンの海外ネットワークを活用した拡大余地

統合の目的と期待される成果
1. 規模の経済によるコスト効率化
  • 共同仕入れによる調達コスト削減
  • 物流拠点や配送網の統合
  • プライベートブランド(PB)の共同開発
2. デジタル・IT基盤の統合
  • POS・在庫管理システム統合による運営効率化
  • 顧客データを活用したマーケティング高度化
  • オンライン処方・EC強化
3. 人口減少・薬価改定への対応
  • 地域医療連携の強化
  • 調剤併設店舗の更なる拡大
  • 少子高齢化でも成長可能なサービス構造へ転換
4. 海外市場(アジア)での成長加速
イオンの海外拠点を活かし、ASEAN・中国など成長市場でドラッグストア展開を強化。

買収条件:株式交換比率と評価のポイント
株式交換方式でウエルシアが完全子会社化
本M&Aは 株式交換(完全子会社方式) により実施されます。統合後はツルハHDが最終的な親会社となり、ウエルシアHDは上場廃止されます。

株式交換比率(ポイント)
  • ウエルシアHD 1株 → ツルハHD 1.15株
  • この比率はツルハHDの1→5株分割を反映後の数値
  • 比率の算定には第三者機関による算定を使用し、妥当性検証を実施

イオンの影響力強化
  • イオンは統合後のツルハHD株の議決権比率を 50.9% に引き上げる方針
  • 追加取得(TOB)を通じてグループ支配権を強化

日程
2025年4月11日:経営統合・株式交換契約を正式締結
2025年5月26日・27日:両社の株主総会で統合を承認
2025年9月1日:ツルハHDが株式を1→5に分割
2025年11月26日:ウエルシアHDの最終売買日
2025年11月27日:ウエルシアHD上場廃止
2025年12月1日:株式交換効力発生日(統合完了)
2025年12月3日:イオンによる公開買付(TOB)実施
2026年1月6日:TOB終了予定

まとめ:日本最大のドラッグストアM&Aがもたらす未来
今回の ツルハ × ウエルシアの経営統合は、単なる規模拡大ではなく、
  • 地域医療・調剤の強化
  • 海外市場の開拓
  • デジタル基盤の統合
など、未来のドラッグストアモデルを創る大規模戦略です。

人口減少・薬価改定・競争激化など厳しい環境が続く中、「スケール × 専門性」 を両立させた統合モデルは、今後のドラッグストア M&Aの新たな基準になると見られています。M&A・事業再編を検討する企業にとって、非常に示唆の多い事例です。