2025.10.29
 
2025年10月29日、住友商事株式会社は、グループのITサービス大手であるSCSK株式会社を完全子会社化すると発表しました。

同社が100%出資するSCインベストメンツ・マネジメント株式会社を通じて公開買付け(TOB)を実施し、保有していない約49.5%の株式を取得します。買付価格は1株あたり5,700円で、直近株価に約34%のプレミアムを上乗せ。買収総額は約8,820億円に達する見込みです。TOB期間は2025年10月30日〜12月12日の予定で、成立すればSCSKは上場廃止となります。

このM&Aは、住友商事がAI・デジタル領域での事業競争力を強化するための大きな一歩とされています。

買収の背景:商社×ITのシナジーを最大化
住友商事:脱資源型ビジネスへの転換
住友商事は総合商社としてエネルギー・資源・金属など多岐にわたる事業を展開してきましたが、近年は**「脱資源依存」を掲げ、非資源分野の拡大を重視しています。特に、AI・データ活用・クラウド技術を駆使したDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略**を中核に据えており、SCSKとの連携強化はその重要施策の一つです。

SCSK:ITソリューションの中核企業
一方、SCSKはシステム開発・インフラ構築・BPOサービスなどを手がける総合IT企業で、住友商事が50年以上育ててきたグループの中核企業です。約1万社の取引先を持ち、ソフトウェア開発やクラウドサービス、AI導入支援など幅広い領域で実績を持っています。また、ネットワーク大手「ネットワンシステムズ」の買収など、近年はIT基盤強化を加速していました。

M&Aの目的:AI・デジタル人材・データを統合
今回の完全子会社化の最大の目的は、グループ全体のデジタル戦略を一体化し、AIを中心とした新事業開発を加速することです。
  • SCSKのAI・クラウド・システム開発ノウハウを住友商事グループ全体に展開
  • 商社としての幅広い事業ネットワークとデータ資産を活用し、新たな価値を創出
  • 各事業部門での業務改革・生産性向上を支援
  • グローバル市場でも通用するデジタルソリューション企業体制の構築
住友商事社長は発表の中で「生成AIの進化はビジネスのあり方を根本から変えている。両社の技術と知見を融合し、社会課題の解決に貢献したい」とコメントしています。

買収条件
  • 買付方式:公開買付け(TOB)
  • 買付主体:SCインベストメンツ・マネジメント株式会社(住友商事100%子会社)
  • 買付価格:1株あたり5,700円
  • プレミアム率:約34%
  • 買収総額:約8,820億円
  • 買付期間:2025年10月30日〜12月12日
  • 資金調達方法:ブリッジローンを利用し、後に社債・長期借入金へ転換
  • 完全子会社化手法:TOB成立後、株式併合によるスクイーズアウト

日程
2025年10月29日:M&A公表
2025年10月30日〜12月12日:公開買付け期間
2026年2月頃(予定):SCSK臨時株主総会(株式併合議案)
2026年春頃(予定):上場廃止・完全子会社化完了

今後の展望:商社グループのDX推進をリード
今回の完全子会社化により、住友商事は「商社×IT」という独自のシナジーモデルをさらに強化します。AI・IoT・データ分析などの先端技術を用い、製造業・物流・金融などグループ各分野の効率化を推進。SCSKはこれまでの顧客基盤を維持しつつ、住友商事のグローバルネットワークを活用し、日本発の総合デジタルソリューション企業として新たな成長フェーズに入ると見られます。

まとめ
住友商事によるSCSKの完全子会社化は、単なるグループ再編ではなく、AIを中心とした次世代事業戦略の起点といえる動きです。AI時代を見据えた企業のM&A戦略として、今後の他業界への影響にも注目が集まります。