
アーンアウトとは?
M&Aの取引では、買い手と売り手の企業価値に対する評価が食い違い、交渉が難航することがあります。特に成長性の高い企業や業績が安定していない企業の場合、この「価値のズレ」はさらに大きくなりがちです。
こうした状況で注目されるのが「アーンアウト」という仕組みです。これは、買い手にとっては過大なリスクを避ける手段となり、売り手にとっては将来の成長が取引価格に反映されるチャンスとなります。
本記事では、アーンアウトの基本的な仕組みや利用される背景、計算方法、メリットとデメリット、そして実務上の注意点をわかりやすく解説します。
こうした状況で注目されるのが「アーンアウト」という仕組みです。これは、買い手にとっては過大なリスクを避ける手段となり、売り手にとっては将来の成長が取引価格に反映されるチャンスとなります。
本記事では、アーンアウトの基本的な仕組みや利用される背景、計算方法、メリットとデメリット、そして実務上の注意点をわかりやすく解説します。
アーンアウトとは?
アーンアウト(Earnout)とは、M&Aの取引において、企業の買収価格の一部を将来の業績に連動して支払う仕組みのことです。
- 取引完了時に、まず買い手から売り手に一定の金額を支払う
- その後、目標とする業績(売上高、営業利益、EBITDAなど)を達成すれば追加で支払いが行われる
つまり「条件付きの対価」であり、成果に応じて最終的な売却価格が変動する仕組みです。特に今後の成長性が評価の鍵となる業種で活用されやすい特徴があります。
アーンアウトが利用される背景
アーンアウトが活用される理由のひとつは、買い手と売り手の認識ギャップを埋めるためです。
- 買い手の立場:将来の不確実性を考えると、高値で買収するリスクを避けたい
- 売り手の立場:今後の成長可能性を価格に反映してほしい
このように対立しがちな両者の利害を調整するために、アーンアウトが用いられます。
特に以下のようなケースで有効です:
- 成長途上のスタートアップ企業
- バイオ・ハイテクなど研究開発リスクが大きい産業
- 将来予測が難しい新興市場でのクロスボーダーM&A
日本と台湾ではまだ利用例が多くありませんが、海外特に米国では一般的な手法であり、日本企業や台湾企業の国際的な取引において採用が広がりつつあります。
アーンアウトの計算指標・期間と金額の設定
設定される指標
アーンアウトでは、達成状況を測るための指標(KPI)を事前に取り決めます。代表的なのは以下の通りです:
- 売上高
- 営業利益
- EBITDA
- 業種によっては新薬承認件数やユーザー数など非財務KPI
計算の仕組み
アーンアウトの算出方法は多元的であり、以下が代表的なモデルです:
- 閾値モデル:目標値を上回った利益の一部を配分
- 段階的支払いモデル:業績水準に応じて段階的に金額を設定
- マイルストーンモデル:新製品発売や認可取得など成果に連動
期間の設定
一般的に、アーンアウトの評価期間は1〜3年程度が多いです。あまりに長いと外部要因の影響を受けやすく、逆に短すぎると企業価値を正しく反映できないため、3年程度が妥当とされています。
金額の決定
最終的な支払い金額や算定方法は、買い手と売り手の交渉で決まります。両者のリスク分担や評価差を埋めるために、透明性のある数式を用いることが望まれます。尚、アーンアウト額には買い手の支払リスクを限定する上限(キャップ)を設けることが一般的です。
アーンアウトを利用するメリットとデメリット
買い手にとってのメリット
- 初期の支出を抑えられる
- 成果が出た場合のみ追加支払いとなるためリスクを軽減できる
- 売り手とリスクを分担することで取引成立の可能性が高まる
売り手にとってのメリット
- 成果を出せば当初の想定以上の対価を得られる
- 将来の成長性を価格に反映できる
- 経営に残る場合、目標達成によって追加収入が得られモチベーションにつながる
買い手にとってのデメリット
- 想定以上の成果が出た場合、支払い総額が予想を超える
- 業績を正確に測定・検証するための負担が増える
- 会計処理や指標認識の違いから紛争リスクが生じる
売り手にとってのデメリット
- 支払いが分割され、すぐに資金を得られない
- 目標未達の場合、追加対価がゼロになる可能性がある
- 経営権が移るため、買い手の方針次第で業績達成が左右される
アーンアウトを実行する際の注意点
アーンアウトを契約に盛り込む場合、以下の点に注意が必要です。
1. 条項を明確にする
業績指標、算定方法、支払条件は曖昧さを残さず明文化することが重要です。
2. KPIのバランス
短期的利益偏重にならないよう、非財務KPIも検討すると良いでしょう。
3. 期間の妥当性
通常は3年以内に設定し、外部環境リスクを最小化します。
4. 再売却リスクへの対策
買い手がアーンアウト期間中に企業を転売することを防ぐ条項を入れるケースもあります。
5. 専門家の活用
会計・税務面での取り扱いが複雑なため、必ず専門家の助言を得るべきです。
1. 条項を明確にする
業績指標、算定方法、支払条件は曖昧さを残さず明文化することが重要です。
2. KPIのバランス
短期的利益偏重にならないよう、非財務KPIも検討すると良いでしょう。
3. 期間の妥当性
通常は3年以内に設定し、外部環境リスクを最小化します。
4. 再売却リスクへの対策
買い手がアーンアウト期間中に企業を転売することを防ぐ条項を入れるケースもあります。
5. 専門家の活用
会計・税務面での取り扱いが複雑なため、必ず専門家の助言を得るべきです。
まとめ
アーンアウトは、M&Aにおける「リスク分担」と「価値の橋渡し」の役割を果たします。買い手にとっては過大な支払いを避ける手段となり、売り手にとっては将来の成長を価格に反映できる仕組みです。
一方で、設計や契約内容が複雑であり、誤解や争いを生じやすい側面もあります。企業経営者がM&Aでアーンアウトを検討する際には、
一方で、設計や契約内容が複雑であり、誤解や争いを生じやすい側面もあります。企業経営者がM&Aでアーンアウトを検討する際には、
- 条項の明確化
- 適切な指標と期間の設定
- 専門家の助言活用
といった点を押さえることで、取引を成功に導く可能性が高まります。
アーンアウトを正しく理解し活用することで、買い手・売り手双方にとって納得感のあるM&Aを実現できるでしょう。
アーンアウトを正しく理解し活用することで、買い手・売り手双方にとって納得感のあるM&Aを実現できるでしょう。