2025.08.25
 
医療機器大手のテルモ株式会社(東京証券取引所:4543 )は2025年8月25日に、英国の医療機器開発会社OrganOx Limitedを約15億米ドルで買収すると発表した。買収契約は2025年8月23日に締結済みで、必要な規制当局の承認取得後にOrganOx社を完全子会社化する予定である。

OrganOx社はオックスフォード大学発の企業で、肝臓移植向けの常温灌流(NMP)装置「metra」を開発・提供しており、米国FDA承認(2021年取得)、EU・英国等での認可を経て、これまで世界で6,000例以上の肝移植に利用されてきた実績がある。テルモはこの買収により、臓器移植関連分野に本格参入し、中長期的な新規成長事業の確立を目指す。

M&Aの目的
テルモの発展背景
テルモは世界160カ国以上で医療機器を展開するグローバル企業であり、近年は成長分野への投資を強化している。例えば2025年3月にはコーポレートベンチャーキャピタル(Terumo Ventures)を通じてOrganOx社に出資しており、同社との技術連携を深めていた。今回の買収も、先端医療技術の獲得を通じて事業ポートフォリオを高度化する狙いがある。

OrganOxの発展背景
OrganOx社は2008年にオックスフォード大発のスタートアップとして設立され、体温近い温度で酸素・栄養液を臓器に循環させるNMP技術で臓器を活性状態に保つ臓器保存装置を開発してきた。同社の肝臓用装置は2021年に米FDAの承認を取得し、2022年から米国で販売を開始。欧州連合(EU)や英国などでも承認を得ており、これまで全世界で6,000件を超える肝移植に利用されている。さらに、OrganOxは2030年頃の実用化を目指して腎臓用装置の開発も進めている。

M&Aの目的と期待される成果
テルモは本買収によって臓器移植関連分野に新たに参入し、中長期的な成長事業を確立することを目指している。具体的には、テルモの医療機器開発力とOrganOxのNMP技術を融合させ、より付加価値の高い臓器保存装置を生み出すことに注力する方針だ。これにより、ドナー臓器の使用率向上やマージナルドナー(従来基準外の臓器)の活用促進、移植成績の改善、夜間や緊急手術の削減による医療従事者の負担軽減など、移植待機患者と医療現場が抱える課題に対する革新的なソリューションを提案することが期待されている。

買収条件
TerumoはOrganOx社株式の全株式を現金で取得し、買収価格は概算で15億米ドルと見込まれている。この金額は買収完了時にOrganOx社の現預金や有利子負債、運転資本を調整して最終確定される予定で、調達資金は金融機関からの借入れで賄う計画だ。買収は現金対価で行われ、OrganOx社は買収後にテルモの完全子会社となる。

日程
買収発表は2025年8月25日付で行われ、両社は2025年8月23日に最終契約書を締結している。買収の完了時期は米国等の規制当局からの承認取得後、実行する予定とされている。