2025.08.15
 
2025年8月14日、ベアリング大手ミネベアミツミ(MinebeaMitsumi)は、温度センサー大手の芝浦電子(Shibaura Electronics)に対する公開買付(TOB)の価格を、従来の1株5,500円から6,200円に引き上げると発表しました。この価格は、台湾の受動部品大手ヤゲオ(Yageo)が提示している最新提案と同額です。ヤゲオは5月から6,200円でのTOBを実施しており、両社の競争はますます激化しています。芝浦電子は世界の温度センサー(NTCサーミスタ)市場でトップクラスのシェア(2023年時点で13.5%)を持ち、製品は軍事や航空宇宙といった安全保障に関わる分野にも利用されるため、日本政府の審査動向にも注目が集まっています。

M&Aの目的
買い手企業の背景(ヤゲオ、ミネベアミツミ)
台湾のヤゲオは1977年創業で、世界有数の受動電子部品サプライヤーです。年商は40億米ドルを超え、世界に61カ所の生産拠点と4万人以上の従業員を擁します。近年はセンサー事業への進出を強化し、M&Aによる事業拡大を進めています。

一方、ミネベアミツミは1951年創業のミネベアと、精密モータメーカーのミツミ電機が2017年に統合して誕生した企業で、精密ベアリングや小型モーター、電子部品の製造で知られています。過去には「ホワイトナイト」として複数の買収案件に介入し、日本企業の技術防衛にも関与してきました。

売り手企業の背景(芝浦電子)
芝浦電子は1953年に設立され、NTCサーミスタや各種温度センサーの製造で世界をリードしています。従業員は約4,800人、年間売上は3,200億円以上で、製品は自動車、産業機器、家電、医療機器、さらには軍事・航空宇宙分野まで幅広く使用されています。その高い技術力は、日本国内外の産業競争力において重要な位置を占めています。

買収の目的と期待される成果
ヤゲオは芝浦電子の技術と販売チャネルを統合することで、センサー事業の拡大とグローバル市場での成長加速を狙っています。経営陣は、両社のリソースを結合することで高いシナジー効果が期待できるとしています。

ミネベアミツミは「ホワイトナイト」として参入し、日本の重要技術の海外流出を防ぐとともに、自社の競争力強化を目指しています。ヤゲオにとっては製品ポートフォリオの拡充、ミネベアミツミにとっては国内技術の防衛と事業シナジー創出が、それぞれの戦略的意義となっています。

買収条件
買収価格と対価の方法
ヤゲオは当初、1株4,300円で芝浦電子の全株式取得を目指してTOBを計画しました(2025年2月発表)。その後、両社は互いに価格を引き上げて競り合い、ミネベアミツミは4月10日に4,500円、5月1日に5,500円と引き上げ、ヤゲオは4月17日に5,400円、5月8日に6,200円まで引き上げました。8月14日、ミネベアミツミも6,200円に引き上げ、両社が同額で並びました。両社とも現金による買収であり、株式交換などは行われません。推定総額は約1,000億円規模とみられています。

取得目標と条件
ヤゲオは芝浦電子株式の100%取得を目標としており、ミネベアミツミも同様です。最終的な勝敗は、日本当局の審査結果や株主の選択によって左右される見通しです。

日程
2025年2月5日:ヤゲオ、1株4,300円でのTOB計画を発表。
2025年4月10日:ミネベアミツミ、「ホワイトナイト」として1株4,500円でTOB提案。
2025年4月17日:ヤゲオ、価格を5,400円に引き上げ。
2025年5月1日:ミネベアミツミ、5,500円に引き上げ。
2025年5月8–9日:ヤゲオ、6,200円に引き上げ、5月9日にTOB開始。
2025年7月15日:ヤゲオ、外国為替法審査の進捗に伴いTOB期間を8月1日まで延長。
2025年7月28日:ミネベアミツミもTOB期限を8月1日まで延長。
2025年8月1日:両社ともTOB期限を8月18日まで再延長。
2025年8月14日:ミネベアミツミ、6,200円に引き上げ、TOB期限を8月28日まで延長。
今後の予定:8月19日に芝浦電子がヤゲオ高雄工場を訪問、9月には芝浦のタイ工場をヤゲオが訪問予定。両社とも2025年第3四半期までの買収完了を見込んでいます。